ベッドに腰掛け、昨夜のミラとの闘いを脳内再生していると

「トランクス」

　部屋の前から、父さんの声がした。

　父さんがわざわざ部屋まで来ることが珍しく、何かあったのかと「はい！」と返事をして部屋のドアを開けると、そこには腕組みをした父さんが、不機嫌な顔で立っていた。

「どうかしましたか？」

　特に何かあったわけでもないらしく、落ち着いたようすの父さんに尋ねると

「見張りを代われ。俺はトレーニングに行って来る」

　父さんは、俺が返事をする前に

「あいつ等はリビングにいる」

　そう言って、そのまま歩いて行ってしまった。

　真琴さんだけでなく、梨子さんまで護衛することになったことが、きっと不機嫌の理由だろう。

　有無を言わさない、その背中を見つめ「わかりました」と答えたものの「見張る」ということが、彼女の傍に行くことだと思うと、気が重くなった。

　梨子さんから距離を置いて一週間。

　完全に。とはいかないだろうが、俺と顔を合わしさえしなければ、あの日、フリーザ軍の二人に襲われたことを、彼女が思い出すことも減るだろう。

　そう思い、梨子さんの前に姿を現さないよう、過ごしていた。

　なのに……。

　昨夜の一件のせいで、彼女を護衛することになり、俺の企みは無駄に終わることとなった。

　トワとミラに対して、いつも以上の憤りを感じると同時に、俺と顔を合わせることで、梨子さんが、襲われた時のことを思い出しはしないかと懸念しながら、俺は彼女たちがいるリビングへと足を向けた。