梨子さんに想いを伝えた次の日――。

　いつものように、朝のトレーニングを終えてレストランに行くと

「っおはようございます……！」

　俺に気付いた彼女が、テーブルを拭いていた手を止め、恥ずかしそうに目を伏せながら挨拶をしてくれた。

　昨日、夕食の時に顔を合わせた時は、避けるように目を逸らされたので、彼女の方から挨拶をしてくれたことは嬉しかった。

　そんな梨子さんにホッとしながら

「おはようございます」

　と挨拶を返して席に着くと、彼女がすぐ俺にところにやって来た。

　傍に来た彼女を見上げると、梨子さんは赤く染めた顔を俯かせ「あ、あの……」と言うと

「あとで、お話しがあるんですけど……いいですか？」

　と、遠慮がちに尋ねてきた。

　すぐに、昨日の告白のことだろうと察し

「ええ。大丈夫ですよ」

　そう答えると、梨子さんは固くなっていた表情を少し緩め

「じゃ、じゃあ……朝ご飯、食べ終わったら中庭に来てもらえますか」

　と続けた。

　決まりが悪そうに佇んでいる彼女に

「分かりました。食べたら行きます」

　と、頷くと

「……じゃあ、中庭で待ってます……！　あの、朝ご飯用意しますね。待ってて下さい……！」

　梨子さんはそう言うと、厨房の方へ小走りで行ってしまった。

　その、逃げるように遠ざかって行く後ろ姿を見つめながら

　もう、いままでのように、彼女と朝食を食べたり、街へ出掛けたりすることはないかもしれないな……。

　そう思うと、告白したことを少し後悔した。