警戒から表情を険しくしていると、足が地面に着く感触がすると同時に視界が開けてきた。

　ワームホールを抜けた先――。　

　そこはまるで、俺の世界の人造人間たちが暴れていた頃のような、荒れ果てた街が広がっていた。

「ここは……？」

　ここがいつの時代で、どこの街かも分からない。

　ただ、地球であることは間違いなさそうだ。

　黒い雲に覆われた空を見上げ、人の気配を探ったが、人の気配は感じられない。

　不気味なくらい静まり返った街の中で、梨子さんと二人佇んでいると

「トランクス？！　何であなたまでここにいるのよ！」

　空から、俺の名前を忌々しそうに呼ぶ声が聞こえてきた。

　声のする方を睨みつけると、そこには思った通り、ワームホールを創り出した犯人が宙に浮いていた。

「トワ！　やはりおまえの仕業か！！」

「まったく……。あなたって、本当にいつも私たちの邪魔をしたがるのね」

　やれやれというふうに肩を竦め、溜息交じりに言うトワに

「ワームホールを使って梨子さんを攫うなんて……一体どういうつもりだ！？」

　真琴さんを……というのなら分かるが、何の関係もない梨子さんをワームホールを使って連れ去ったことを問うと

「決まってるじゃない。人質よ、人質」

　トワは悪びれるようすもなく、即答した。

「人質だと？！」

「そうよ。この子を人質にして、あの真琴って子に、私が改良した神聖樹の実を食べてもらおうと思ったの」

　そう答えるトワは、可笑しそうに微笑を浮かべた。