あまり強く引っ張り上げようとすると、彼女の身体を痛めてしまう危険もあり、怯えた表情で沈んでいく彼女の右手を掴んだまま

　クソッ！

　奥歯を噛んでいると、梨子さんが

「トランクスさん……！」

　震える声で、また俺の名を呼んだ。

　すでに、胸の辺りまで沈み込み、泣きそうな顔で俺を見つめる彼女の右手を握りながら

　早く梨子さんを救い出さなければ！　しかし、どうすれば……？！

　必死に考えた末、俺は梨子さんの手を離さないようにしっかりと握ると、自分自身もワームホールの中に飛び込んだ。




『ワームホール』は別の時空間へと繋がるトンネルのようなものだ。

　だから、必ずどこかへ繋がっている。

　どこへ繋がっているかは分からないが、例えどこへ繋がっていようと、俺が梨子さんを必ず守ってみせる！

　繋いでいる梨子さんの右手をしっかり握り直すと、梨子さんが俺の手を握り返してきた。

　驚いて梨子さんを見ると、俺の手を握り返してきたのは無意識らしく、彼女は不安からきつく目を瞑っていた。

　そんな梨子さんの不安な気持ちを少しでも取り除こうと

「大丈夫です。どこへ辿り着こうと、俺が梨子さんを守りますから」

　そう言うと、梨子さんがハッとしたように、俺の方へ顔を向けるのが視界の端に見えた。

　彼女からの視線を紛らわすように、足元に視線を落とすと、出口が近付いてるらしく足元が明るくなってきた。

　一体どこへ繋がってるんだ……！？