そんなワケないだろ！　

　とツッコミながら、梨子がトランクスさんを全く別人と考えてることを疑わしく思ってると

「どうしよう……。どうしたらいい？！」

　梨子が縋るように見つめてきた。

「どうしようって……。あんたがトランクスさんのことを、そんなふうに思えないならそれを言ったらいいんじゃないの？」

「えっ……？！　言うって……何て？！　何て言えばいいの？」

　頭を抱える姿に、密かに溜息を吐くと

「それはシンプルにゴメンナサイでしょ。気持ちには応えられないんだから」

　振る時の常套句を提供すると

「そ、そっか……。ゴメンナサイか……。そ、そうだね……」

　梨子は納得したように呟いたが、その顔は曇っていた。

　その顔を見て、確かに「振る」って行為は心苦しいものがあるよなと思った。

　それが初めてなら猶更だし、相手があのトランクスさんだ。

　あんないい人が「振られる」のは、私でも心苦しさを感じる。

　でも、相手の気持ちにはちゃんと応えないといけない。

　そうしないと失礼にあたる。

　そう思って、私はきちんと振ったことがある。

　まぁ、人を振るっていうのも、経験の一つだ。

　思い切ってトランクスさんを振ってこい！

　そんな思いで、目の前の梨子を見つめてると

「マコちゃん、ありがとう……。トランクスさんには、ゴメンナサイって言う……ね」

　梨子は少しホッとしたようにそう言ってから

「でも、本当にビックリした……。ね？　マコちゃんもビックリしたでしょ？」