梨子ちゃんに振られた直後なら分かるけど、あれから半月は経つのよ？

　今更避けるなんておかしいでしょ。

　他に何か、梨子ちゃんを避ける理由でもあるのかしら？

　……考えても仕方ないわ。

　直接本人に聞いてみなきゃ！
　
　私は思ったことは口に出さず「きっと、たまたまよ」なんて笑って、その場をやり過ごした。

　


　その日、レストランにトランクスが現われたのは、みんなが昼食を終え、かなり経ってからだった。

　レストランに入るなり、私の存在に気付いたトランクスは、一瞬ギョッとした表情をしてから

「母さんも、今から昼食ですか？」

　何事もないように、話しかけて来た。

　さっきの表情から、やっぱり何かバツの悪いことがあると察知した私は

「いいえ、あんたを待ってたのよ」

　正直に、トランクスを待ってたことを打ち明け、私の向かいの席に座るよう促した。

　そんな私に、トランクスは少し表情を硬くしてから「そうですか」と言って、私の正面に座ると

「それで、俺に何か用ですか？」

　落ち着いた声で聞いてきた。

　別に、隠し事もやましいこともないって感じの顔に

「あんた、梨子ちゃんのこと避けてるでしょ？」

　単刀直入に聞くと、トランクスの眉はピクリと動き、少し間を置いてから

「気のせいですよ」

　ふっと笑顔を浮かべ答えた。

　どうやら、正直に答える気はないらしい、もう一人の我が子に

「でも、梨子ちゃんがあんたのこと一週間近く見てないって言ってたわよ。そんなこと、避けてなきゃ無理でしょ」