真琴さんは誤魔化すように笑ってから、ふと俺を見て

「ウロウロさせて、すみません」

　小さく頭を下げ「もう少し待っててください」帰り支度をする子供たちの方を振り返った。

　稽古を終え、入口へ向かって来る子供たちは、俺に気付くなり「誰だ？」という訝しむ目や好奇の目を向けつつ「さようなら」と礼儀正しく挨拶し、道場を出て行く。

　そんな子供たちに

「気を付けて帰りなよー」

　真琴さんは声をかけ、全員を見送ってから

「さて。じゃあ、お願いしてもいいですか？」

　竹刀を手に、外に出て来た。

「外でするの？」

　何故？　という顔をする梨子さんに

「勝手に道場にあげるわけにはいかないから」

　真琴さんは当然という口調で答えてから「こっちです」俺を道場の隣りへ連れて行った。

　連れられて来たそこは、庭木も何もない殺風景な、ただ空いた庭の一画。という場所だった。

　ただ、打ち込み稽古をするだけなら、十分な広さはある。

「いつものでいいですか？」

　俺は真琴さんに確認を取ってから奥へ進み、適当に距離をとって、真琴さんと対峙した。

　そして、いつも通り、右手の人差し指を立て、真琴さんが打ち込んでくる竹刀を、捌く構えをとった。

「いつでもどうぞ」

「それじゃあ、いきます」

　真琴さんは竹刀を構えると、こちらをキッと見据えるなり、右足を思い切り踏み込み、打ち込んで来た。