「……父さんも寝付けませんか？」

　隣りで寝るトランクスも落ち着かないらしく、そう声を掛けてきた。

　何の関係もない他人の出産など、どうでもいい。

　そう思うも、やはり「出産」というこのタイミングに居合わせたことに、何か感じるものがあるらしく

「……そうだな」

　トランクスの問いに正直に答えると「そうですか……」という、意外だというような声が返ってきた。

　リビングの方からも、梨子の両親が孫の誕生を待ち侘びている様子が伝わってきて

　チッ……！　眠れそうにないぜ……。

　そんなことを思いながらも、いつの間にか寝てしまっていたようで、気が付くと朝を迎えていた。

　ハッとして隣りを見ると、そこにはトランクスの姿はなく、俺は慌てて布団から起き出すと、慌ただしさを感じるリビングへと向かった。

　足早に廊下を進み、間もなくリビングというところで

「父さん！！」

　俺の気を察知したトランクスが、リビングから顔を覗かせ

「産まれました！　産まれましたよ！！　女の子だそうです！！」

　嬉々とした顔で、そう報告してきた。

　その報告を聞いて

「そっ、そうか！！　産まれたか！　それで、あの女……あいつも大丈夫なのか？！」

　尋ねると

「はい！　母子ともに健康だそうです！」

　安堵の表情が返ってきた。

「そ、そうか……！」

　それを聞いた俺は、まるで我が子が産まれたかのような感動を覚え、胸には高揚感が湧き上がってきたのだった。