ソファから立ち上がり、病院を後にした。



　梨子の家に戻ると、梨子の両親が二人で夕食を食べていた。

　帰って来た俺たちに

「ああ、おかえりなさい」

　梨子の母親は、咀嚼していたものを慌てて呑み込んでから立ち上がり

「ベジータさん、今日は本当にありがとうございました」

　すぐに頭を下げてきた。

　それに続いて、父親の方も椅子から立ち上がると

「いやいや、本当にとんでもない日になってしまって……！　ベジータさんがいなかったらどうなっていたか……。いや、本当ありがとう」

　深々と頭を下げた。

　そんな二人に

「大したことは何もしていない」

　そう返すと、二人は「いやいや」というふうに頭を振ってから

「まぁ、早く座って下さい。食事にしましょう。作る時間がなくて、今日は出来合いのものになりますけど……」

　梨子の母親はそう言って、俺たちに席につくよう促すと、キッチンの方からスーパーマーケットで買って来たのだろう、寿司や焼き鳥、揚げ物などをテーブルに並べはじめた。

　手作りではない夕食。

　それがこの食卓に並んだのははじめてで、この日が日常でないことを物語っている。

　俺たちはあの女の出産が迫る何とも落ち着かない雰囲気の中で、静かに夕食を食べはじめた。




　出産というものはどれ程の時間がかかるのか。

　経験したことのない俺は落ち着かず、布団の中で寝返りを繰り返していた。

　そんな俺に気付き