「時の界王神とは、まだ連絡がつかんのか」

「はい……。こちらからも、何度も通信を試みてはいるのですが……。やはり、宇宙を移動しているからか、難しいようで……」

「……そうか」

　少し前までなら、怒りと焦燥感。そして、本当に自分たちの地球に帰れるのかという不安から気を昂らせていた。

　だが、いまは落ち着き、俺はやっと、置かれているこの状況を冷静に受け入れていた。

　この地球に来た頃

　『焦ってもどうしようもないです。ここは諦めて、この状況を満喫してください』

　諭すように真琴に言われた。

　確かに、あいつの言う通り「諦め」「満喫」する方が、賢い凌ぎ方だということを理解し、俺もいま、この状況を「満喫」とはいかないが、一つの経験だという気持ちで過ごしている。

　ただ、あの小娘と違うのは、俺は決して「諦めた」わけじゃない。ということだ。

　そう。俺は「受け入れ」たんだ。

　俺の中で「諦める」と「受け入れる」は全く意味が違う。

「諦める」は逃げるに等しく「受け入れる」は、精神鍛錬の末に得た境地のようなものだと思っている。

　この地球に来て、苛立ちからストレスを抱えた状態にあった俺だったが、この樹海という修行の場を得たこと、そして梨子の家でもある寺で瞑想をはじめたことで、心に余裕が出来、次第に焦りや憤りは解消されていった。

　修行や瞑想で得た、この心の余裕こそが、俺に「受け入れる」という境地をもたらしたのだ。
　
　そして、この境地を得たことで、俺は更に強くなった気がした。