部屋に戻るなり、ベッドに座り込んだ私は「おかえりなさい」の一言が言えなかったことを、すぐに後悔した。

　何で言わなかったの？　

　頭の中で聞こえる、責める声に肩を落としながらも、それを紛らわすように、私はスマホの動画アプリを起動させてた。




　ピアノの練習する気も起きなくて、部屋で動画を見たり、漫画を読んで過ごしてるうちに、喉が渇いてきた私は、飲み物を取りに一階に下りた。

　確か、台所の食品棚にミルクティーのペットボトルがあったよね？

　そう思って、台所に行くため、リビングを通り抜けようとしたら、リビングのソファにトランクスさんが座っててビックリした。

　ごはんを食べ終わると、誰かが引き留めない限り、すぐに自分たちの部屋に戻って行くトランクスさん。

　……なのに、今日はどうして？

　お昼の時の気まずさもあって、そっとソファを覗き込むと、トランクスさんは気持ち良さそうに眠ってた。

　ソファの前のテーブルには、冷めきったコーヒーが置かれてて、それを見て、食後のコーヒーを飲んでるうちに寝ちゃったのかな？　って想像した。

　ふと、寝顔を見ると、その寝顔は普段の凛々しい顔と違って、あどけなくて……私の胸は一瞬でキュンとなった。

　その可愛い寝顔に自分を抑えられなくなった私は、ソファを回り込むと、ジッとその顔を見つめた。

　そして、見つめてるうちに「好き」って気持ちが溢れ出してきた私は、もっと自分を抑えられなくなって、気付けば、無防備に寝てるトランクスさんの唇に、そっとキスをしてた。