思ってみるけど、でも。結局行ったとしても、もっと疎外感を感じるだけな気がして、自分がした選択は正しかったんだって、言い聞かせた。

　ベッドに横になると、枕元に置いてあるカピバラのぬいぐるみが目に入った。

　昨日、トランクスさんがくれた、手のひらサイズのぬいぐるみ。

　それを手に取り抱き締めると、昨日の楽しくて幸せだった時間が思い返されて、また寂しくてたまらなくなった。

　


　トランクスさんが帰って来たのは、お昼ご飯を食べ終わって、そろそろ部屋に戻ろうかな。と思った時だった。

　ガラガラと玄関の戸が開く音がして、しばらくすると

「ただいま戻りました」

　にこりと微笑む顔が現れた。

　その顔に、嬉しい気持ちと憎らしい気持ちの両方がせめぎ合って、結果、私は「おかえりなさい」の一言が言えなかった。

　そんな私に代わって

「ああ、おかえりなさい」

　台所からお母さんが顔を出した。

「お昼ご飯まだよね？」

「あ、はい」

「すぐ作るから、待っててもらえる？」

「すみません。ありがとうございます」

　私を挟んで交わされた短い会話が終わると、私は部屋に戻ろうと席を立った。

　別に、意地を張ってるつもりはないけど、何も言わずトランクスさんの横を通り過ぎようとすると

「梨子さんは、もう食べ終わられたんですね」

　眉を下げて微笑む顔に、私は何とか笑顔を意識して「はい」って答えてから、そのままトランクスさんの横を通り過ぎ、ダイニングを出て行った。