「佳奈ちゃん、ちょっといいかしら」

　佳奈の部屋の前にいたブルマが声をかけた。

　その声で、トランクスは抱き締めていた佳奈を解放すると、気まずそうに、部屋の中に入って来たブルマに視線を向けた。

　ブルマはそんな息子に小さな笑みを向けると、場所を譲るように目で合図し、ベッドから立ち上がったトランクスと交代で佳奈の隣りに腰を下ろした。

　腰を下ろすなり、ブルマは佳奈の背中を優しく撫でながら

「大丈夫？　なんて言葉、何の気休めにもならないわよね……」

　哀し気な微笑を浮かべ

「私たちだって、大切な人を失うことの辛さは十分解ってるから……」

　そう呟き、佳奈の背中を撫でていた手を止めた。

　その声には、実際に経験した者の痛みと苦しみがこもっていて、トランクスの胸にも暗く重たいものが差し込んできた。

　こんな思いは、もう二度としない！　誰にもさせたくない……！

　そう思い生きてきたのに、いま、目の前にいる少女に、自分たちに起きたこと以上に理不尽なことが起きてしまった。

　それは、トランクスにとって耐え難いことで、悔しさと、少女の心を救えない己の無力さから、拳を握り締めていると

「これ、見てくれる？」

　ベッドに座るブルマが、着ているシャツの胸ポケットから一枚の写真を取り出した。

　ブルマは、俯く佳奈に写真を見せ

「この写真はね、むかし仲間と撮った写真なの。撮った時は、ただの思い出の一枚だったんだけど、いまは宝物になっちゃった……」