佳奈の部屋へと向かったものの、勝手に部屋の中に入るわけにもいかず、トランクスは部屋の前で立ち尽くしていた。

　ついさっき、母から佳奈は眠っていると聞いたばかりなのに、冷静さを欠いた行動をしてしまっている自分に呆れてしまう。

（こんなことで、佳奈さんを支えられるのか！）

　自分に喝を入れ、佳奈の部屋の前から立ち去ろうとしたその時、部屋の中からドン！　という鈍い音がした。

「佳奈さん？！」

　慌ててドアを開けると、ベッドから落ちたのだろう、佳奈が床の上に倒れていた。

「大丈夫ですか？！」

　急いで佳奈を抱き起し、その顔を覗き込んだトランクスは、息を呑んだ。

　そこには、いままでの天使のような笑顔からは程遠い、憔悴しきった顔があった。

　泣き腫らした目は虚ろで、まるで人形のように、生気というものが感じられない。

　そんな佳奈の姿に、トランクスは胸が潰れそうになり、同時に怒りも込み上げてきた。

　だが、その怒りをぶつけることも出来ず、トランクスは自分の心を落ち着かせるように、佳奈の肩を抱く手に力を込め

「佳奈さん……」

　絞りす出すように少女の名を呟くと、佳奈を抱え、ベッドの淵に座らせた。

　床に片膝をつき、佳奈を見上げるトランクスは、自分を落ち着かせるため、間を置いてから

「どこか、痛いところはないですか？」

　務めて穏やかな口調で話しかけた。