降下をはじめると、少女はビクッと身体を固くし、更に強くトランクスの胸にしがみ付いた。

　少女の無意識の行動に、ますます焦ったトランクスだったが、彼女を怖がらせないよう、自分を落ち着かせ、ゆっくり地上へと下りた。

　地上に着くと、トランクスは抱えていた少女をそっと地上へ下ろし、そのようすを窺った。

　先程まで、あれほど衰弱していた少女だったが、彼女はふらつくようすもなく、しっかりと、自分の足で大地を踏んでいる。

　それを見て、少女の体調が回復していることを確信したトランクスは

「俺はトランクスといいます」

　少女の警戒心を解くように、名を名乗った。

　すると、少女は驚いたように、大きな瞳を見開いてから

「あ、わ、私は夢野佳奈です……」

　そう名乗った。

　……苗字があるなんて、珍しいな。

　トランクスは思ったが、それよりもまず

「あの、佳奈さん。あなたがどうして、あの森の中にいたのか、理由を聞かせてもらえませんか？」

　気になったのは、やはりそこだった。

　あの森の中で独り、かなり衰弱した状態で倒れていたのだ。

　何か、とんでもない事件か事故に巻き込まれたのかもしれない。

　訝しむ顔を佳奈に向けると、彼女は困惑した表情を浮かべながら

「森？　私、森になんて行ってませんけど……」

　そう答えて、大きな瞳を揺らした。

　何のことか分からない。

　僅かに、眉根を寄せる顔に

「え？　でも、俺があなたを見つけたのは、森の中で……。しかも、あなたはかなり弱った状態で倒れていたんです」