そうでなければ、あの廃墟群を、いつまでも残している意味はない。

　トランクスの険しい横顔から想像しても、恐らく、あの集落で「人為的何か」が起こったのだろう。

　そう思うと、異世界の事とはいえ、佳奈の胸に切なさが広がった。

　自分の住んでいた世界でも「戦争」や「テロ」という、人による破壊活動は絶えないが、この異世界も同じなのだと思うと、悲しくなると同時に、この世界も同じ人間が住んでいるんだと、佳奈は強く実感した。

　そんな気持ちで、過ぎて行く、黒い廃墟群を見届けている佳奈の隣りでは、トランクスがこの道を選んだことを後悔していた。

　佳奈には、この星で起こった、人造人間による、あの忌々しい出来事を知って欲しくなかった。

　先程行った博物館には、来館者に配慮しているのだろう、人造人間についての記述や展示は一切されておらず、佳奈が、人造人間のことについて知る要素はなく、安心していた。

　だが。まさか、ドライブの途中で、ヤツ等の破壊した痕跡に出くわすとは……。

　彼女はあの廃墟群を見て、どう思ったのだろうか？

　尋ねたくなったが、それを聞くと、人造人間たちのことを話さざる得なくなるだろうと思い、トランクスは言葉を呑み込んだ。

　彼女には、この世界で起こった、悲しい出来事を知らないまま、自分の住んでいた世界へ帰って欲しい。

　トランクスはそう思うと

「そろそろ、帰りましょうか」

　通り過ぎた廃墟のことには詳しく触れず、差し掛かった十字路を右折し、帰路に就いていた。