まるで

「地方に旅行に来た」

　そんなふうに感じられるが、反対車線を、タイヤの無い、宙に浮いた車が通り過ぎる度に、ここが「日本」でも「海外」でもなく、異世界だということを実感させられ、佳奈の胸には、不安が立ち込めた。

（私、帰れるのかな……？）

　期待していた、自分の住んでいた「地球」に関する手掛かりが博物館になかったことは、佳奈にとって、とても残念な結果だった。

　とにかく、何でもいいから、自分が住んでいた世界に帰るための手掛かりが欲しい……！

　流れる景色を見つめながら、膝に置いていた手の先に力を込めていると、遠くに、廃墟が密集したような場所が見えてきた。

　どこまでも続く、緑の平原の中で、そこだけが、まるで別世界であるかのように、異様な不雰囲気を醸し出している。

　佳奈は目を凝らし、段々近付いて来る、その異様な雰囲気を放つ場所を見て、息を呑んだ。

　そこには、爆撃でもされたかのような、破壊された家々が建ち並んでいた。

　あまりにも、この爽やかな自然の中には不釣り合いな光景に、眉を寄せていると

「集落があったようですね……」

　佳奈の疑問を察したように、運転席のトランクスが、感情を抑えるような声で呟いた。
　
　悔しさ。怒り。

　そんな感情を、声から感じた佳奈は、窓の外から運転席のトランクスの方へ、顔を向けた。

　見ると、トランクスの横顔には険しさが滲んでいて、佳奈は、あの廃墟群は、何かよくないことが起こった象徴なのだろうと、直感的に思った。