自分を警戒しはじめた少女に、トランクスはギクリとしつつ「大丈夫ですか？」もう一度優しく尋ねると、少女はゆっくりと頷いてから、周りの風景を見渡しはじめた。

　すると、自分がいま、どのような状況にあるのかようやく気が付いたようで、首を傾げてから視線を下へと向けた。

　その途端、少女はすぐに「キャッ！」と叫び声あげ、トランクスにしがみついた。

　そんな少女の行動に、トランクスは慌て、彼女を抱える腕に思わず力が入った。

　何せ今まで生きてきて「女の子」と接したことはほとんどなく、こんなふうにしがみつかれたこともない。

　少女のことを意識した途端、トランクスは、少女を抱えているこの状態が落ち着かなくなり、ソワソワしはじめた。

　だが、そんなトランクスの心模様など知るはずもなく、少女はトランクスにしがみついたまま、眼下に広がる、緑色の緩やかな大地を「信じられない」と言った表情で見つめている。

　そのようすを、若干赤みがかった顔で窺っていたトランクスが

「あ、あの……大丈夫です。落ちたりしませんから」

　安堵させるよう声をかけると、少女は顔を上げ

「えっ？！　な、何で？！　だ、だって、私、宙に浮いて……！」

　パニック。といった感じで、大きな声をあげた。

　確かに、人が宙に浮いているなど、世間一般では、あり得ないことだ。

　トランクスは、現在のこの状態が、自分にとっても、彼女にとっても落ち着かない状況であることを悟ると

「と、とりあえず、下りましょうか」

　そう言って、ゆっくり大地へと降下した。