『初めてのデートなんだから、楽しんで来なさいよ！』

　家を出る直前、母ブルマが発した余計な一言のせいで、トランクスは、佳奈を意識せざるを得なくなっていた。

　いくら恋愛に疎いとはいえ、さすがのトランクスも「デート」というものが、どういったものかぐらいは知っている。

　だが、トランクス自身、いまから佳奈と博物館に出掛けることを、デートなどとは思っていなかったので「デート」と言われた瞬間から、激しく動揺していた。

　隣りを歩く佳奈を妙に意識してしまい

（何か話さないと……！）

　必死に頭の中を探り話題を探すも、何も浮かばず、気付けばカプセルコーポレーションを出て、表通りまで来てしまっていた。

　無言でここまで来たことに、トランクスが内心焦っていると、車道をエアカーが数台走り去って行った。

　トランクスにしてみれば何でもない光景で、気にも留めなかったが、隣りを歩いていた佳奈は、ピタリと足を止め、走り去って行ったエアカーを驚いたように見つめている。

　佳奈につられ、足を止めたトランクスは

「……どうかしましたか？」
　
　後ろを振り返る佳奈に尋ねた。

　すると、佳奈は

「いま走って行った車、浮いてましたよね？！」

　驚きと興奮とが混ざった顔で、トランクスを見上げてきた。

　佳奈の反応を怪訝に思いながら「え、ええ」と、この世界では普通に走っているエアカーの存在に、トランクスが頷くと

「スゴい！　あんな車ホントにあるんだ！」