言い終える直前、ふと、ブルマは寂しそうな笑顔を浮かべた。

　勝手に進んで行く話しに、おろおろしていた佳奈だったが、ブルマのその表情を見て、途端に冷静になっていた。



「じゃあ、母さん。佳奈さんと、博物館に行って来るよ」

「ええ、行ってらっしゃい。私は、今日一日研究室に籠るから、悪いけど、昼は外で食べて来て」

「うん、分かった。そうするよ。じゃあ、佳奈さん。行きましょうか」

「は、はい。あの、ブルマさん、行って来ます」

「行ってらっしゃい」

　ブルマは、廊下を並んで歩いて行く二人を、ニヤニヤと言っていいくらいの、にこやかな顔で見送っていた。

　が、すぐに「トランクス！」と、息子を呼び止めると、こっちに来るよう手招きした。

　不思議そうな顔で、自分の元へ戻って来るトランクスに、ブルマは

「分かってると思うけど、佳奈ちゃんを危ない目に遭わせたりしないようにね」

　そう囁いた。

　それに、トランクスが「分かってるよ」そう答えると、ブルマは続けて

「っていうか、あんた。これはデートなんだから、楽しんで来なさいよ！」

　悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「っデ、デート……！？」

　そんなことなど、露とも思ってなかったらしく、顔を赤らめる我が子に

「やっと平和になったんだから、あんたも少しくらい、自分のために時間を使う練習をしなさい」

　ブルマは、にこりと笑うと

「じゃ、行ってらっしゃい！」

　トランクスの背中を叩き、息子を初デートへと、送り出したのだった。