そして、もう一つ。

　ここが「異世界」だと実感したのは、やはり、トランクスに抱えられ「空を飛んだ」ということだろう。

　人間が、機械に頼らず「空を飛ぶ」なんてことは、佳奈がいた世界では、絶対に有り得ないことだった。

　それを、トランクスという青年は、当然のようにやってのけたのだから、佳奈はここが「異世界」なのだと、ますます認めざるを得なくなった。

　視線を窓の外から部屋に戻し

「それにしても、この世界の人と言葉が通じてよかったよね」

　ホッと安堵の息を吐くと

「コミュニケーションとれるだけで、全然違うもん……」

　まともに会話が出来るなら、言葉の通じない海外へ行くより「異世界」の方が気が楽なんじゃないかと、佳奈は、無理矢理ポジティブに考えた。

「それに、トランクスさんもブルマさんもすごくいい人そうだし……」

　佳奈は、自分を助けようとしてくれている親子を思い浮かべ、弱い笑みを浮かべた。

　青い髪と青い瞳が印象的な親子。

　この親子が、佳奈にはテレビで見かける「ハーフ芸能人」のように思えた。

　何故なら、二人とも「芸能人」だと言ってもおかしくない程、美人とイケメンだからだ。

　佳奈は、この家に来る時に間近に見た、トランクスの顔を思い出した。

　サラサラと風になびく髪と、唇を真っ直ぐ結んだ、凛々しい表情。

　あんなイケメンにお姫様抱っこをされたのかと思うと、佳奈は恥ずかしさから、急に身体が熱くなるのだった。