佳奈は吸い寄せられるように、窓際に置かれたベッドまで行くと、そこにストンと腰を下ろした。

　さっき、トランクスとブルマという親子に出会えたことを「ラッキー」だと思ったばかりだが、一人になった途端、また絶望感が佳奈を支配しはじめた。

　何で、こんなことになっちゃったんだろ……？
　
　普通に家を出て、ただ「友達と買い物に行く」。

　そんな、何でもない一日のはずだったのに……。

　電車に揺られていた光景の中に、この「異世界」に来るきっかけがあったのか思い出してみるも、そんな「きっかけ」など到底思い当たらなかった。

　しばらくベッドに座り、ボーッと部屋の中を見ていた佳奈だったが、開いた窓から吹いてきた風に頬を撫でられ、ふと、窓の外に顔を向けた。

　窓の外には、広大な芝生の庭が広がっていて、遠くに見える木々の間からは、白い高層ビルが並んでいるのが見える。

　そのビルを見て、さっき、この家に来る途中に見た、足元に広がる都市を思い出した。

　自分が住んでいた世界では、絵本の中でしか見たことのないような街並み。

　白で統一された中に、ところどころ、カラフルな色の建物が混じった街並みは、ギリシャだったか、イタリアだったか。

　まるで、海外のリゾート地のようで、自分が知る、モノトーンな東京の街並みとは全く違っていた。

　そして、連れて来られたこの家も、イベントホールかと思うような、オシャレなドーム型のつくりで、佳奈は自分が来てしまった場所が、やはり「異世界」なのだと実感した。