研究室を出て、長い廊下を歩いて行くと、ドアが等間隔に並ぶフロアに入った。

　ドアと言っても、自動ドアらしく、ノブはない。

（映画に出てくる、宇宙船のドアみたい……）

　佳奈は、非現実的造りの家を見ながら「異世界」に来てしまったことを、再認識した。

　そんな、宇宙船みたいな、ドアの前をいくつか通り過ぎ、一番奥の部屋の前まで来ると、佳奈の前を歩いていたブルマは立ち止まり、ドア横の壁にあるボタンを押した。

　シュッ！　と勢いよくドアが開くと、そこには、白とピンクの二色でコーディネートされた、可愛らしい空間が広がっていた。

「今日から、この部屋が佳奈ちゃんの部屋よ。好きに使ってね」

　ブルマは、そう言って佳奈の方を振り返ると

「普段は使ってないから、少し窓を開けておいた方がいいわね」

　部屋の中に入って行き、陽光が差し込む窓をガラッと開けた。

　ブルマに続いて、遠慮がちに部屋に入った佳奈は、使用感のない室内を、ぐるりと見回した。

　窓際に置かれたベッドには、ピンクのベッドカバーと布団、部屋の隅には、一人掛けの白いテーブルが置かれている。

　ホテルの一室のような、シンプルでスッキリとした部屋を眺めていると

「じゃ、私は研究室に戻るわね。夕食の時間になったら、また呼びに来るから、それまでは自由に過ごして」

　ブルマは笑顔を向け、そのまま部屋を出て行った。

　佳奈は、ブルマに「ありがとうございます」と頭を下げてから、その後ろ姿を見送った。