「さぁ、どうぞ」

　ブルマが差し出したマグカップから漂う、甘いココアの香りに、佳奈は、心が少し解れた気がした。

　マグカップを受け取り、温かく甘い一口を啜る。

　口の中に広がった甘みは、身体の中にゆっくりと沁みわたっていき、さっきまで暗い絶望の中にいた自分に、僅かだが光を与えてくれた気がした。

　しかし

　何で、こんなところに来てしまったの？

　誰が答えられるだろうこの問いに、佳奈が支配されてしまうのは仕方なく、二口目のココアを啜った時には、たったいま心に宿った小さな光は消えてしまっていた。

　これから、私はどうすればいいの……？

　そんな虚ろな目で、ココアを飲む佳奈を見たブルマは、絶望感漂うそうな佳奈の気分を変えようと

「それにしても、トランクスが女の子を連れて来るなんて、驚いたわ！」

　肩を竦め、息子であるトランクスに話しかけた。

　突然話しを振られ、ビクリとするトランクスに

「相談があるなんて言うし。てっきり、結婚相手でも連れて来たのかと思って、さすがの私も慌てちゃったわよ」

　ブルマはからかう気満々。といった笑顔を向けてから、マグカップに口を付けた。

「なっ、何を言ってるんだよ！」

　いきなり「結婚」という二文字を出してきた母に、トランクスが赤い顔をしながら狼狽えた声を出すと、ブルマは

「分かってるわよ！」

　そう言って、カラカラ笑い

「彼女すらいないあんたが、結婚なんて……。そんな日、いつになることやら」

　ヤレヤレと言ったふうに、頭を振った。