その時、視界の端に見えたユメの横顔に、俺の胸はドキリと跳ねた。

　どことなく寂しそうに俯いた横顔は、いままで見たことのない、大人びた表情で、その横顔に思わず見惚れてると

「どうしたの？」

　ユメは、俺の視線に気付き、不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。

　近いその距離に

「べ、別に……！」

　俺は慌てて顔を逸らし、ドギマギしてる自分を何とか誤魔化した。



　その日以来、俺はユメを意識するようになった。

　校内で女子の集団を見ると、その中にユメがいないか探し、下校時間になると、ユメの気を探り、偶然を装い、一緒に帰ったりした。

　ユメに執着してる自分に呆れつつも

「トランクス君と一緒に帰れるなんて、嬉しい」

　ユメが、そう言ってはにかむと、俺の胸は否が応でも高鳴り、ユメを独占したい気持ちは、日に日に高まっていった。

　そんなある日。

「おい、聞いたか！　サッカー部の三年が、ユメちゃんに告白して、振られたらしいぜ」

「野球部のキャプテンも、振られたってさ」

「俺は、陸上部の一年が告白したって聞いた」

　聞き捨てならない話題が、隣りの席から聞こえてきた。

　おいおい……！　マジかよ……！？

　ユメが、複数の男から告白されてることを知った俺は、話し掛けてくる、女子の話しなんて全く耳に入ってこなくなり

　このままじゃ、ユメを取られる……！

　そんな焦りが、俺を支配した。