「トランクス社長、一緒に写真いいですか？」

「ああ」

「ほら、みんな入って入って！　アキも！」

「あ、うん……」

　彼を中心に、煌びやかにドレスアップした女子社員たちは笑顔を作ってシャッターが押されるのを待っている。

　私はその中の、一番端の方に立ち笑顔を作った。

　一年に一度行われる社員を労う為のパーティー。

　この日だけ、いつもは遠い存在である社長と接する機会がやってくる。

　この機会を逃がすまいと、どの女子社員も気合を入れて自分を着飾り、ワントーン高い声を発し、自分の存在をアピールする。

　まぁ、去年まで私もまさにそんな一人だったんだけど……。

　憧れの社長のお眼鏡に適おうと群がる女子社員たちに混ざり「私もそんな一人です」という顔をしていると、ふと、彼と目が合った。

　何かを伝えてくるその視線に私は

「ゴメン……私、そろそろ帰るね」

　と、隣りにいた同僚に言い残し、会場を後にした。



　パーティー会場になっているホテルの一室。

　その部屋にノックの音が響いたのは、私が会場を出てから二時間が過ぎた頃だった。

　カチャリ……とそっとドアを開けると、優しく微笑む彼の顔が見え、ドアを大きく開けた。

「ゴメン！　遅くなって」

「ううん。それより、お疲れ様」

「ああ……」

　そう言って苦笑いを浮かべる彼は、部屋に入るなりすぐにソファに腰を沈めた。

「ふふっ！　モテル人は大変だね」

　グラスに水を注ぎながら笑うと

「女の子たちと話すのは気を遣うよ……」

　彼は珍しく天を仰いでぼやいた。