鏡には、いたって普通の顔が映る。

　特に美人でもないその顔に、メディカは小さく溜息を吐いた。

　私の、どこがいいんだろ……？

　トランクスのように恰好良く、地位もある王子様のような人が、何故自分を選んでくれたのかがメディカには謎だった。

　彼ならもっと、美人で知性のある女性を選ぶことが出来るし、そのような女性の方が相応しい。

　それに、黙っていてもそういう女性が寄って来る筈だ。

　現に、タブレ社の令嬢との「結婚話し」が、持ち上がろうとしていたじゃないか……。

　なのに……何故彼は、ごくごく普通の自分のような人間を恋人にしたのだろうか？

　メディカは再び溜息を吐き

　もしかしたら、高級なレストランの美味しい料理に食べ飽きて、素朴な家庭料理の方が美味しく感じる……。みたいな……？

　そう思うと、胸の奥がズキリとした。

　ただの、箸休め？　

　味付けを変えたかっただけ？

　――私のどこが好き？

　一度聞いてみたい。

　でも、改めて聞くのも怖い。

　答えに詰まられたら、かなりショックかも……。

　そんな不安が胸を過る。

「トランクスさんを信じます！」

　そう誓った筈だが、やはり心の奥底ではいつも不安が横たわっていた。

　薄く化粧を施した不安気な顔を見つめ

「あー！　ダメダメっ！！　こんな顔してたら！」

　考えていたことを払うようにして、鏡の前から立ち上がり

「よし、今日も一日頑張らなきゃ！」

　元気を装うと、メディカは鞄を手に持ち、自宅を出たのだった。