西の都の病院の受付ロビー。

　そこに座る彼を見るなり

「ああ……！」

　と、カプセルコーポレーション社長秘書である彼女は安堵の表情を見せた。

「ご心配をおかけして、申し訳ありません……」

　そう言って眉を寄せ苦笑いを浮かべる顔は

「ただの骨折です」

　と、三角巾で吊るされた腕を見せた。

「ハァァ。よかった……！　事故に巻き込まれたと聞いて、社長と心配したんですよ！」

「本当に申し訳ない……」

「いえ……事故ですし、仕方ありませんわ……」

「ところで……社長は間に合いましたか？」

「ええ。別の運転手を手配しましたから」

　彼女が安心させるように答えると

「ああ、それはよかった……！」

　カプセルコーポレーション社長専属の運転手である彼は、とてもホッとしたように安堵の表情を見せた。

　事故に遭い、救急車で運ばれたという連絡を受けた時は心臓が止まる程驚いたが、こうして病院に駆けつけてみれば、命に別状はないようでホッとした。

　秘書は社長から預かった「当分は自宅療養するように」といった伝言を伝えると

「本当に申し訳ない……。しかし、夏季休暇の時期と重なったのはよかったです……」

　と、運転手は眉を寄せ微笑んだ。

　そんな彼につられるように、秘書の彼女も眉を寄せ微笑むと

「さぁ、ご自宅までお送りしますわ。行きましょうか」

　そう言って、２人はロビーから正面玄関へ向かって歩き始めた。

　

　
　平日午後の混み合う受付ロビーから、玄関へ向かって少し歩いたところで、前から歩いて来る女性医師がハッとしたようにこちらを見ているのに気が付いた。