そう言って、手を伸ばした。

　娘の方を振り返ったベジータは、海から伸びるブラの手をひっぱり上げると、横抱きに抱え、そのまま元居たビーチへと飛び去って行ったのだった。

　その様子を黙って見つめていると

「ふふふっ！」

　やっと声を出せたというふうに、メディカから笑い声が漏れた。

　フロートマットに身体を預け浮かびながら、飛び去って行った父娘を見つめ

「ベジータさん、ブラちゃんが心配だったんですね」

　にこにこと微笑み言う顔は、隣りで浮かんでいるトランクスへと向けられている。

　下から見上げるメディカに「俺もですよ！」と言いかけたが、トランクスはその言葉を飲み込んだ。

　それは、父と同じ行動をした自分が恥ずかしかったからかもしれない。

　まさか、父まで飛び出すとは思ってもいなかった……。

　同じ行動をした父に驚きながら、ビーチに着いた父娘を見ていると、ザザーッという波の音で沈黙に気が付いた。

　それと同時に、メディカと２人きりだということにも気付き、今日、初めてのこの状況に少し気不味さを感じていると

「さて、私も戻ろうかな」

　メディカが２人乗りの大きなフロートマットを押して、海の中を進み始めた。

　波の抵抗を受けるフロートの所為で、ぐんぐんとは進みそうにないその様子に

「俺が押すよ」

　トランクスはにこりと笑うと、メディカにマットに乗る様に促し、海へと入った。

　そして、これが失敗だったと気付いたのは、メディカが「いいの？」と、遠慮しながらもフロートマットの上に乗った直後だった。