メディカとの、久し振りのデートの日。

　残念なことに、その日は朝から雨が降っていた。

　年間を通じて、晴れの日が多い西の都で、何故今日に限って雨なのか……。

　メディカに、再プロポーズをする気でいたトランクスの胸に、都の空同様、暗雲が立ち込めた。

　普段は、吉凶のことなど気にしない質だが、この日ばかりは、不吉な予感が頭を過り

（プロポーズは止めておいた方がいいかな……）

　手の中のリングケースを、じっと見つめてから、ショルダーバッグの中に潜ませた。

　不吉な予感に捉われたまま、メディカの住むマンションへと車を走らせていたトランクスだったが、マンションの前に佇む、メディカの姿を目にした瞬間、胸に立ち込めていた暗雲に、晴れ間が差し込んだ。

　メディカの姿を見ただけで、こんなに気持ちが明るくなるなんて……！

　自分の単純さに苦笑いしながら、トランクスは、沈んで行きそうになっていた「プロポーズ」という言葉を強く引き上げると、ハンドルを握る手に力を込めていた。
　
　

（ああ。やっぱり、落ち着くし、癒されるな～）

　出掛けた先で入ったカフェ。

　メディカと向かい合って座るトランクスは、久し振りの二人の時間を、噛み締めていた。

　メディカと過ごす時間は、トランクスにとって、何ものにも代え難い特別な時間で、気負うことも、緊張感もなく、自然体の自分でいられた。

　毎日、大企業のトップという肩書を背負っているトランクスにとって、メディカと過ごす時間こそ、真に心が休まる時間だった。