まさか、別れようとか……？！

　悟天から聞いた男の存在が頭を過り、悪い方にしか考えが向かず、通話ボタンを押すのを躊躇っていたが、呼吸を整えてから電話に出た。

『もしもし。トランクスさん？』

　耳元でする声に、普段なら胸が温かくなるのだが、今日は完全に委縮していて「あ、うん……」と、明らかにテンションの低い声を漏らすと、何故そんな声なのか当然理由を察したのだろう、受話器の向こうから

『あの……私……今日のこと謝りたくて……』

　という、申し訳なさそうな声が聞こえてきた。

　謝る……？

　いや、謝るのはむしろ自分の方だと思うと、トランクスは

「……い、いや、謝るのは俺の方だよ。ゴメン……突然仕事中に呼び出して、あんなこと……」

　プロポーズという人生で大事なイベントを、焦燥感から思いつきでしてしまったことを深く反省した。

『ううん……！　私こそごめんなさい……突然で、びっくりして……』

「は、ははは……。そうだよな……びっくりするよな……」

　しかも、勤務先で。

　ギャラリーがいる中で。

　そりゃ、逃げたくもなるよな……。

　メディカが去った後、一人残された自分に同情の目が向けられていのを思い出し、恥ずかしくて堪らなくなっていると

『う、うん……。だから、あんなふうに言っちゃったんだけど……本当は、嬉しかったの……』

　はにかむメディカを想像させる声音に、トランクスが「え……」と声を漏らすと

『嬉しかったの。結婚しようって、言ってくれたこと』

　メディカは「嬉しかった」と繰り返した。