「結婚」の二文字が頭に浮かんだことはない。と言えばそれは嘘になる。

　あんなに素敵な人と結婚出来たならどんなに幸せだろう。

　そんな夢が頭を過ったことは何度かあった。

　しかし――。

　今日のプロポーズはあまりに突然過ぎた。

　しかも、患者さんや病院関係者もいる病院の屋上で……！

　あまりに突然の公開プロポーズに自分自身も驚いたが、その場に居合わせたベンチに座る患者さんとその家族、車椅子の患者さんとその患者さんの介助をしていた看護師たちも目を丸くしていた。

　一瞬の沈黙の後、すぐに「まぁ！」や「おお！」という歓声と拍手があがったが、そんなギャラリーの温かい反応を無視するように

「急に……そんなこと言われても……！」

　と、メディカはトランクスからのプロポーズを受け入れることが出来ず、思わずその場から逃げていた。

　あの後、トランクスさんどうしたんだろう……？

　メディカは自分のした対応を後悔しつつも

　でも、何で……？

　何で急に「結婚しよう」なんて……？

　三ヵ月ぶりに逢った彼からの突然のプロボーズに頭を悩ませた。

　付き合ってもうすぐニ年。

『結婚はタイミング！　付き合ってる期間なんて関係ないんだから！』

　結婚した友人が言ってたことを思い出しながら、学会のために三ヵ月逢わなかったことがそのタイミングになったのかと、メディカはぼんやり思った。

　だが。

　結婚するタイミングはいまじゃない。せめて、研修期間が終わるまでは……！

　という声が、メディカの頭の中で響いていた。