そんな彼の意志を尊重して、離れ離れになることに不満は言わなかった。

　もし、あの時「行かないで欲しい」と言っていたら、自分たちは別れることはなかったのだろうか……。

　そんなことを思いながら、彼の横顔を見つめていると

「お腹空いてるだろ？　なぁ、あの店行かないか？　よく二人で行った、大学の近くにあったあの店！」

　彼は懐かしそうに顔を輝かせると、西の都の大通りを歩き出した。



　二人でよく行ったレストランは、オムライスの美味しい店だった。

「懐かしいな」

　と言って、二人でサラダやオムライスを注文し、運ばれてきた料理を食べながら、思い出話や仕事の話しをしていると、突然

「メディカは彼氏いるんだろ？」

　と聞かれ、メディカは「え？」と、聞き返した。

「いや、綺麗になったからそうじゃないかなと思って。どう？　そうだろ？」

　当たった。とでも言うように嬉しそうに笑う顔に「うん」と小さく頷くと

「そっか。仕事もプライベートも順調そうだな。安心したよ。で、その彼はどんなヤツなんだ？　俺よりいい男？」

　彼はおどけた口調で尋ねてきた。

「うん。優しくて、いい人。それに、すーごくカッコイイの」

　にんまり答えると

「へぇ。どんなヤツか見てみたいな」

　楽しそうに言ってから

「もし、メディカにふさわしくなかったら、俺が奪ってやるのにな。なーんて」

　彼は本気なのか冗談なのか分からない台詞を言って笑った。

　そんな彼の言葉に動揺するのを

「大丈夫。納得するくらい素敵な人だから」

　そう言って誤魔化すと