『また、会えるかな？　会いたいんだ』

　むかしの恋人の言葉に、胸が僅かにときめいてしまった自分に、メディカは罪悪感を感じていた。

　私にはトランクスさんがいるでしょ！

　そう自分に言い聞かせていることにも後ろめたさを感じ、元恋人との再会以来、何故か心が落ち着かないでいた。

　やっと、学会での発表を終え心身共に解放されたと思っていたのに……。

　メディカはふぅと短い息を吐くと、長らく逢っていない現在の恋人・トランクスのことを想い浮かべた。

　学会が終わるまでは逢えない――。

　そう言ったのは自分で、彼も気を遣って逢うことも、電話やメールも控えてくれた。

　なのに、それに不満を抱いている自分がいる。

「言ったのは私なのに……」

　病院のデスクに座り、一人愛しいトランクスを想い沈んでいると、デスクの上の携帯電話がブゥゥンと鳴った。

　手に取って見た携帯電話の液晶には、元恋人の名前が映し出されていた。

　メディカは一瞬電話に出るか躊躇ったが、手の中で振動し続ける電話を無視することは出来ず「はい……」と電話に出ていた。



「ゴメン、急に呼び出したりして」

「ううん、私は大丈夫だけど……明日から学会なんでしょ？　そっちこそ大丈夫？」

　明日行われる学会のため、西の都を訪れたという元恋人に尋ねると

「大丈夫だよ。今回はただの付き添いだから。それより、久し振りに西の都に来たけど、やっぱりここは大都会だなー」

　彼は、夜でも明るく照らし出された西の都のビル群を眺めた。

　都市部ではなく、僻地医療を志した彼。