社長業というものが多忙な仕事だということは分かっていたつもりだった。

　それに、研修医という立場である自分も、担当する科によっては多忙になることも分かっていた。

　だから、普通の恋人たちのように、二人で過ごす時間が容易に持てないことは覚悟していた。

　が、まさかこれ程二人の時間が持てないとは……！

　メディカは手にした携帯電話の未読メールをチェックしながら、逢いたくてたまらない彼の名前を探した。

　今日はきてないか……。

　勤務を終え、肩を落としながら更衣室を出たメディカは、勤務先である西の都の病院から徒歩十分程の場所にある自宅マンションへと向かって歩きだした。

　トランクスさんと最後に逢ったのはいつだっけ……？

　もう三ヵ月近く逢っていない大好きな彼のことを想いながら、メディカはぼんやり歩いた。

　お互い忙しい合間に電話をするくらいで、声しか聞けてない状態が続いている。

　逢いたくて逢いたくてたまらない気持ちを、電話口で何度も吐露しそうになったが、彼の負担になってはいけないと思い、何度も吞み込んだ。

「逢いたいな……」

　自分には勿体ないくらいカッコ良くて優しい彼のことを想いながら、溜息交じりに呟いてると、自宅マンションの前に人が立っているのに気が付いた。

　この辺りは西の都の中心から少し離れていることもあり、夜になると人通りもまばらだ。
　
　しかもマンションの前に人が立っていることなど滅多にない。

　メディカは意外さと、少しの警戒心を抱きながら足を進めた。