パオズ山へ行くことになったのは、西の都の街路樹も色づき始めた１１月中旬の土曜日だった。

２連休などないメディカは、当直明けの夕方からパオズ山へと向かうことになり

「悟空さんが迎えに行くから、お兄ちゃんと一緒に来てね！」

というブラの言葉に動揺し、そして悟空の瞬間移動という特殊能力を知らないメディカは（何で悟空さんが？）と疑問を抱いた。

１泊分の荷物が入った大きめのトートバッグを肩から提げ、メディカは先日と同じ公園でトランクスと悟空を待ちながら、これから逢うだろうトランクスにどんな顔をして逢えばいいのかと思い深い溜息が漏れた。

あの日はあの後、微妙な空気になりながらも何事もなかった様に過ぎていったが、１週間という短い空白の時間がメディカを戸惑わせる。

（はぁ・・・。気が重い・・・。）

球体のオブジェにもたれ掛り、暗い空を見上げていると

「メディカさん！」

という声と共に、トランクスがいつもと変わらない笑顔で空から下りて来た。

「トランクスさん・・・！」

驚きながらも、彼の名を呼ぶ自分の声が弾んでいるのが分かった。

その自分の声に（あぁ、やっぱりこの人が好きなんだなぁ・・・。）と、メディカは自分に呆れながら苦笑いを浮かべた。

「すみません、待たせてしまって！」

「いいえ、そんなに待ってませんから。・・・それより、私の方こそすみません。トランクスさんはお休みだから、先にパオズ山に行けたのに・・・。」

「えっ。あ、あぁ、俺もすることがあったので・・・。」