（何を考えてるの、私・・・！そんなことある筈ないじゃない・・・。）

胸の奥に潜む図々しい気持ちを一生懸命否定へと追い込んだ。

彼の優しさを勘違いしてはいけない―。

メディカはそう強く自分に言い聞かせながら、海の果てを見据えると、そこには晴れ渡っていた空を塗り替える様な、黒く湧き立つ雲が空を覆い始めていた。

立ち止まり不穏な空を見つめるメディカに気付き

「そろそろ戻りましょうか。」

と言うトランクスの声で、２人はずいぶんと離れてしまった街の方へと戻り始めた。

青く広がっていた空の面積が、想像以上の早さで黒い雲に覆われて行く様が、自然の偉大さを物語っている。

街へと辿り着く前には、空からシャワーの様な雨がサーッと降りだし、２人は走ってビーチから抜け出した。

しかし、周りはヤシの木が並んでいるだけで、雨を凌げる様な場所は見当たらず、トランクスは急いで背負っていたボディバッグからカプセルケースを取り出すと、そこからカプセルを１つ選び投げたのだった。

〝ボーン〝という音と共に現れた小型の車に２人は乗り込むと、お互いに「ふぅ・・・。」と息を吐き、雨に濡れる窓を見つめた。

降り出した雨は所謂スコールというもので、その雨は温かく柔らかかった。

微かに聞こえる〝サーッ〝という雨音も、耳に優しく心地良い。

頭上のヤシの葉から雨が伝って落ちてくるのを見つめていると

「濡れちゃいましたね。」

そう言って、雨に濡れた腕をハンカチで拭ってくれるメディカにドキリとした。

「あっ、ありがとうございます！」