自分もこんなに素直に気持ちを言えたらいいのに・・・。

そう思うが、なかなかそうなれないのが、臆病で意地っ張りな大人というものだろうか。

「そうね・・・。また、会いに来てくれたらいいね。」

自分の願望を、少女の素直な気持ちに便乗させてしまった自分はズルイなと思いながらにこりと微笑むと

「うん。だってもっと仲良くなりたいもん。」

そう言った少女にまたもや自分の気持ちを代弁され、メディカは思わず苦笑いを浮かべた。

この後指導医も回診に訪れ、少女とのおしゃべりの時間は終わってしまったが、あのまま続いていたら、きっと自分のトランクスへの満たされない欲求が膨らむばかりだっただろう。

あの時「逢えて嬉しかったです。」と言った言葉が、自分が言える精一杯の素直な気持ちだった。

しかし、その言葉は決して未来には繋がっておらず、あの時トランクスが「また来ようかな。」と言った後「また逢いに来て下さい。」そう続けることが出来たら、何かが変わっていたのだろうか。

メディカは過ぎてしまったことを思い返しながら、少女の病室を後にするのだった。






「お疲れ様！」

そう言って、メディカが病院を出たのは夕方６時半を少し回った頃だった。

昨夜が当直だったこともあり、疲れが溜まった体を家へと向かわせる。

こんな時、家が近くにあることは非常にありがたい。

マンションの部屋へと向かいながら、いつもの様に鞄から携帯電話を取り出し、勤務中に着信やメールがなかったかチェックしようと携帯を見ると「留守番電話１件」という文字が液晶画面に映し出されていた。