若きカプセルコーポレーション社長をエアカーで自宅へと送った帰り、しんと静まり返っていた車内に「ふふっ！」と笑う声が漏れた。

後部座席から聞こえたその声に、運転手がルームミラーを見ると、何か思い出した様に秘書の彼女が可笑しそうに笑っている。

「・・・どうかしましたか？」

「あ、あぁ・・・ふふっ！ごめんなさい。ちょっと社長のことを思い出してしまって。」

と答える彼女は、珍しく楽しそうな表情を浮かべている。

「社長が？何かありましたか？」

「ええ。社長の意外な一面を知ってしまって。」

「・・・意外な一面？」

「ふふっ。どうやら、社長に好きな人がいるみたいなんです。」

そう答える声に

「あ・・・！ハハッ！」

と、運転手は思わず笑ってしまった。

「もしかして、ご存知なんですか！？」

驚いた様に尋ねる声に

「きっと、彼女でしょう。」

そう答える運転手の声は、どこか嬉しそうに聞こえる。

「知ってるんですね？！」

上司のロマンスのお相手を知っているその口ぶりに、興味津々とばかりに秘書は声をあげると

「ええ。可愛らしい方ですよ。」

そう言って穏やかに答える声の主は、若い社長の恋を知ってから、その恋が実ることを密かに願い見守っている中の一人だった。

「そうですか・・・。まぁ、社長にそういうお相手がいてもおかしくないわよね。」

納得した様に頷く声に

「ええ。社長とはいえ、まだ若い１人の男ですから。」

明るい声で答えると

「そうですね。ふふっ！」

と笑う秘書は、流れる景色を見ながら、すぐに上司の恋のお相手を想像し始めるのだった。