足元に広がる桜色の雲。

深い藍色を思わせる夜空に浮かぶ丸く黄色い月―。

今この目の前に広がる情景が、まるで絵本の中に居る様に感じ、一瞬夢の中かと錯覚した。

だが、抱えている腕の中の確かな温もりに、これは現実なのだと引き戻されると、思わず腕に力を込めていた。

それに気付いたメディカと視線が重なり

「次は誰もいない時間に来ようか。そしたら、もっと桜に近づけるから。」

穏やかに声をかけると「はい。」と頷く顔は、胸に頬を寄せてきた。

「この桜が散る前に、必ずまた来よう。」

トランクスはグッとメディカの肩を抱く手に力を込めると、そっとメディカの顔を覗き込み、桜の花びらの様な可憐な唇にそっと自分の唇を重ねるのだった。




「ありがとうございます！」

病院の屋上に降り立つなり微笑む顔に

「あーあ、もう時間切れか。」

溜息混じりにぼやくと

「ホントにあっという間ですね。」

と言う顔にも名残惜しさが滲んでいた。

「・・・でも、少しでも逢えて嬉しかったです。」

名残を振り切る様に、柔らかい笑みを向ける彼女のいじらしさに、カッコ悪いと思いつつも

「もう少し、一緒にいたいなぁ・・・。」

と、思わず口にしていた。

「・・・逢いたい時はメールしていいですか？」

やはり名残惜しさを目一杯滲ませ言う彼女に

「っ、もちろん！」

と頷いたが、嬉しそうに微笑んだその顔は、すぐにハッとした表情になり

「でも、お仕事を優先してくださいね！途中で抜け出したらダメですよ！」

と、念を押してきて、ギクリとした。