桜の花なら今見てるけど？

そう思っていると、スッと足元を掬われる感覚に襲われ、気付けばトランクスに横抱きに抱えられていた。

「もっと、近くまで行こう。」

そう言う端正な顔を見上げると頬が染まるのが分かり、それを誤魔化す様に俯くと、トランクスの胸の辺りをキュッと握った。

すると、それが合図だったかの様に２つの体はスーッと上昇し、幻想的な風景が広がる公園の方へと進み始めた。

初めて見る黄色や白、赤いネオンが足元を流れる夜の都の景色はとても綺麗で、眼下のネオンの海にじぃっと見入っていると

「もうすぐ着くよ。」

と言う声で、ハッと顔を上げた。

そして、顔を上げて思わず息を呑む。

そこには、桜の花が雲の様に広がっていて、まるで夢の中にいる様だった。

つい今まで見ていた人工的な景色とは対照的な、自然のありのままの美しさと幻想的な風景に言葉が出てこない。

眼下に広がり始めた淡いピンクの雲海に目を奪われていると

「どう？」

と尋ねてきた声に

「凄く、奇麗・・・！」

と、輝いた表情を向けていた。

「これは空からじゃないと味わえないからね。」

満足そうに微笑む顔は

「本当はもっと近くまで下りたいけど、人がいるから今日はここまでかな。」

と、少し残念そうに続けた。

下から見上げたことしかなかった桜が、足元に広がっていることが面白く

「ふふっ！やっぱりトランクスさんといると初めてばっかり！」

楽しそうに笑うメディカに、トランクスは満足そうに微笑むと、桜の花以上に胸を締め付けてやまないメディカの笑顔を愛しそうに見つめるのだった。