〝コンコン〝とドアをノックする音が響き「失礼致します。」と秘書が入って来た。

あまりのタイミングの悪さ（良さ？）に一瞬動揺するも、咄嗟に分厚いファイルに目を通す振りを装うと、秘書は疑う様子もなくコツコツとヒールの音を鳴らしデスクの前までやって来た。

「先程、担当者からタブレ社の会長がお倒れになり病院に運ばれたと連絡がありました。」

神妙な顔で告げてきた秘書に

「えっ！？タブレの会長が？！」

と、トランクスは驚きの声を上げた。

タブレ社の会長とは先週会ったばかりで、その時はとても元気だった筈だ。

「担当者からの話しでは命に別条はないとのことです。ただ、しばらく入院されるそうで・・・。社長、お見舞いはどう致しましょう？」

「そうか・・・命に別条はないんだな・・・。」

トランクスはホット表情を緩めると

「よし、見舞いに行く。すまないがタブレ社に連絡しておいてくれないか。」

と、続けた。

「かしこまりました。それでは、早速タブレ社へ連絡を取っておきます。」

「あぁ、頼むよ・・・。あ、病院はどこなんだ？」

「西の都の病院だそうです。」

そう言って奇麗なお辞儀をして部屋を出て行く秘書の姿を見つめながら、トランクスは

（西の都の病院だって・・・！）

そう心の中で叫ぶのだった。

まさか西の都の病院へ行く機会に恵まれるとは・・・！

不謹慎だがトランクスにしてみれば願ったりな事が起こり、複雑な心境と共に遠く見える西の都の病院を見つめ

「会えるかな・・・。」

そう願望を口にすると、トランクスはデスクに向き直り、高く積まれた書類に目を通し始めるのだった。