「よかったら、一緒に乗って行かない？」

下心など微塵も感じさせない微笑む顔にそう言われ、メディカは少し躊躇するも

「・・・すみません。ありがとうございます。」

そう微笑むと、タクシーに乗り込んだのだった。



（・・・嘘だろ・・・！）

その光景を、トランクスは愕然とした気持ちで上空から見つめていた。

またしても、あの男にメディカを掻っ攫われ呆然としてしまう。

そしてそれ以上に、メディカがあの男と共にタクシーに乗ったことがショックだった。

「早くしないと、誰かに取られるわよ。」

今更になって、母に言われた言葉を実感し、拳を握る。

何度かデートをして、その中で事故の様なものだったがキスまでして・・・。

いくらでも「好きだ。」と伝えるチャンスはあったのに、どうしても伝えられなかった自分に怒りが込み上げてきて、同時にどうしようもない焦燥感に駆られた。

心の中がぐるぐると渦を巻き、後悔という言葉で支配されそうになっていると、メディカを乗せたタクシーは走り出し、トランクスは慌ててその後を追うのだった。

２人を乗せたタクシーを見失わないように追い掛け、最悪の展開にならないようにと心から祈りながら飛んでいると、メディカのマンション近くでタクシーは停車し、彼女だけがタクシーから降りてきた。

いつもと変わらぬ柔らかい笑みを車中に向け、頭を下げるメディカを上空から見つめながら、安堵の息を吐く。

そして、それと同時に、走り去るタクシーを見送る彼女をまるでスパイの様に監視している自分に嫌悪を抱いた。