（・・・誰かが選んでくれたのかな・・・。）

特別な女はいない―。

そう思いたいのは自分の勝手な願望だ。

極力、彼のプライベートなことは聞かないようにしていた。

だから、周りの人間関係など、あの仲間たち以外のことは知らない。

「想っている女がいる」それを知るのが怖くて聞けなかった。

（メディカさんだけですよ・・・。）

と言われたあの言葉は、真に受けたら傷つくだけの様な気がして、思い出しては首を振った。

だが、思わせぶりな態度を取るトランクスに、心のどこかで期待している自分もいた。

しかし、あの事故の様なキスのことをお互い触れることもなく、デートの前後以外は電話で話すことも、メールのやり取りをすることもなく、期待する様なことは何もなかった。

（当たり前か・・・。）

自嘲気味に笑い

（もう、やめなくちゃ・・・。）

夜空に咲いた鮮やかな大輪の花を見ながら、そう心に決めた。

この恋は、パッと咲いて散り、火の粉となって海へと落ちていく花火の末路と同じー。

叶わぬ恋だと分かっているのに、期待して、ただ自分を満足させる為に彼に逢って・・・。

でも、関係が深くなることも、自分から想いを告げて関係をはっきりさせる勇気もなくて・・・。

ただ、トランクスへの想いを募らせ、独りよがりになってしまっているのなら―。

それはもう、ただの執着じゃないだろうか・・・。

それならば・・・

もう、逢うのはやめにしよう・・・。

あの夜、去っていくエアカーを見つめ、そう決心したメディカの目からは、一筋の涙が流れた。