〝ブゥーン〝とシャツの胸ポケットに入れていた携帯電話が振動したのは、取引き先との会食を終え、エアカーで自宅へと向かっている時だった。

携帯を取り出すと、そこには新着メールが届いており、差出人はなんとメディカからだった。

思いも寄らぬ、彼女からのメールに驚きながら、すぐさまメールを開くと

　お疲れ様です。
　今からお電話しても大丈夫ですか？

と書かれており、短い文面とはいえ、嬉しさのあまり表情を明るくさせると、急いで指先を動かした。

早く彼女の声が聞きたくて、ニヤニヤしながら手の中の電話を見つめていると、隣りから視線を感じ、見ると秘書と目が合いギクリとした。

「な、何かな？」

誤魔化す様に、一つ咳払いをしてから尋ねると

「・・・明日予定しておりました、役員会議ですが、時間の変更がありまして、３０分程遅らすことになりました。」

タブレットに視線を戻し、答える秘書に

「・・・そうか。分かった。」

と頷く顔は、頬を染めながらも、普段の涼しい若社長の顔に戻っていた。

夜でも十分に明るい都の街を走り抜け、カプセルコーポに着いたのは２１時になろうかという頃で

「それでは、社長。明日は７時にお迎えにあがります。」

「あぁ、そうだったな。」

「それでは、失礼致します。」

「お疲れ様。明日も頼むよ。」

そう言うと運転手と秘書は一礼し、エアカーに乗り込むと、カプセルコーポを走り出て行ったのだった。

そして、エアカーが通りへと走り出て行った時には、トランクスはすでに取り出した携帯電話を耳に当て、呼び出しのコール音聞いていた。