花火大会会場となっている魚港付近は、すでに多くの人が押し寄せていた。

観覧席となっている、漁港の側にある２階建ての漁業事務所下にある水揚げ場はすでに満員らしく、会場整備をする大きな声が、漁港のそこかしこから聞こえてくる。

特等席であろう水揚げ場に入ることが出来なかった人々は、漁港の側にある広い公園や町から漁港へと続く道路、高台にある学校のグラウンドへと誘導され、中には立ち入り禁止となっている漁船に乗り込んでいる見物客もいる。

「ちょっと出遅れましたね・・・。」

トランクスは想像以上に混み合う様子にそう零すと

「そうですね・・・。」

メディカは苦笑いを浮かべてから

「離れた場所でもいいですよ。近くまで行かなくても観れますし。」

と、隣りのトランクスを見上げた。

「そうですね・・・。とりあえず、ここから離れましょうか。」

人の波に押され、眉を寄せるトランクスの手をギュッと握り、メディカが「はい。」と頷くと、２人はくるりと向きを変え港の入り口付近まで戻り始めた。

人の波に逆らいながら、ここではぐれたら大変だと、メディカはトランクスの手を離さないようにしっかりと握り、その手に引かれるまま人と人の間を抜けて、やっと人が押し寄せて来る港から出ると

「大丈夫ですか？」

と、苦笑いを浮かべる顔に尋ねられた。

「は、はい・・・！」と人の群れから抜け出せたことにメディカがホッと大きく息を吐くと

「すみません・・・。もう少し早い段階で抜け出せばよかったですね・・・。」

と、申し訳なさそうな顔を向けられ