トランクスと逢う度、話す度、そしてデートの前後。

それを思ったが、一度考えてしまえばいい方向には絶対向かわないことは分かっているので、深く考えることはやめていたのだが、今日は違った。

はぐれたことにすぐに気付いてもらえなかった切なさと、その程度の存在なのだということ突きつけられ、現実を見なくてはいけないのだと思うと、メディカの心にはある決心が芽生え始めたのだった。




「お待たせしました。」

柔らかい笑顔と共にコーヒーを差し出された時には、トランクスはとっくにクレープを食べ終わっていた。

「ありがとうございます！」

そう言って受け取ったコーヒーからは、芳しい香りと温かさが伝わってくる。

一口啜ると生クリームの甘さが残る口の中は一瞬ですっきりとし、コーヒーの苦味が際立った。

「ブラックで良かったですよね？」

微笑む彼女に「ええ。」と答えながら、自分の好みを知ってくれていることが素直に嬉しく、表情を緩めていると「ふぅ・・・」と微かに吐息の漏れるのが聞こえ、隣りのメディカへと顔を向けた。

コーヒーを一口飲んでホッとしたらしいその顔に

「飲んだら花火会場の方に向かいましょうか。」

微笑みかけるトランクスに「はい。」と答えるメディカの笑顔の中に、憂いが隠れていることなど全く気付かないまま、トランクスは満足そうに口角を上げると、気持ちの昂ぶりを抑える様に、再びコーヒーカップに口を付けるのだった。

そしてコーヒーを飲み終えた２人は、花火が打ち上げられる海を囲む様に作られた、港の観覧会場へと向かって歩き出した。