もしかして、私が一階に下りてきたことすら、気付いてなかったのかな？

　トランクスさんの驚く顔を見て、意外に思った。　

　私はてっきり「気を読む」っていうことを、常にしてるもんだと思ってたから。

　でも、そうじゃないことを知ると、ホッとする半面、何だか寂しい気持ちにもなった。

　トランクスさんには、私の存在を意識してて欲しいな……。

　そんなことをポツリと思ってた。

　少し前まではなかった気持ちに、自分でも戸惑いながら、私はトランクスさんが座るソファの後ろを通って、台所に向かった。

「おはよう」

　台所を覗くと

「どうしたの、やけに早いじゃない？！」

　ガスコンロの前で、ハムを焼いてるお母さんは、そんなに驚かなくても……っていうぐらい、目を丸くした。

「う、うん。目が覚めちゃって」

　適当に誤魔化して、食器棚から朝ごはんに使う食器やお箸を取り出してると

「ふふっ。そうよね。お客様がいるのに、いつもみたいに、お昼近くまで寝てられないわよね」

　嫌味を言われ、返す言葉がなかった。

　だって、お母さんの言う通り、休みの日は起きるのが早くて十時くらいだから。

　でも、いまはトランクスさんとベジータさんが家にいる。

　さすがに、そんな状況で、いつもみたいに寝てられない。

　それに、今日は約束があった。

　私にとって、それはすごく大切な約束で、楽しみにしてる約束。　　

　だから、寝てなんていられなかった。

「もうすぐ御飯出来るから、トランクスさんに席に着くよう言ってちょうだい。あと、これお願い」