目の前のテレビを見ると、そこには深い緑の稜線がいくつも続く山々と、透き通るような空の色が映っていた。

　綺麗だな……。

　この映像を見て、まだよく知らない、この地球を周ってみたいと思った。

　舞空術を使えば、あっという間に周れるが、この地球の事情を考えると、舞空術を使うわけにもいかず、もどかしい気持ちになる。

　そう考えると、俺たちの住む地球は「国境」なんて呼ばれるものや、監視もない。

　だから、世界中の誰もが、どこでも自由に移動出来る。

　それが当たり前だっただけに、この地球が窮屈な惑星だと、改めて実感した。

「国境」なんてものがなければ、舞空術で梨子さんと一緒に、この地球の色々な場所に行けたのにな……。

　テレビから流れてくる、賑やかな声をぼんやり聞きながら、そんなことを思っていると

「おはようございます！」

　梨子さんの声がして、身体がピクッ！　と過剰反応してしまった。

　まさか、梨子さんが起きてくるとは思っておらず

「お、おはようございます！」

　声のした方に顔を向けた俺は、嬉しさと驚きが混ざった、上擦った声で挨拶を返していた。

　微笑みながら、そよ風のようにリビングに入って来た梨子さんは、俺が座るソファの後ろを通り過ぎ

「おはよう」

　キッチンに顔を覗かせた。

　すると、キッチンから智子さんの

「どうしたの、やけに早いじゃない？！」

　という驚く声が聞こえ、続けて

「う、うん。目が覚めちゃって」

　梨子さんの、気恥ずかしそうに答える声が聞こえてきた。