「今日は土曜日だから、二人ともゆっくりなのよ」　

　静まり返っている理由を教えてくれた。

　そう言えば、土曜と日曜は学校は休みか……。

　曜日に縛られない生活を送っているため、土曜と日曜は休日だという感覚が欠落している自分に、心の中で苦笑した。

『タイムパトロール』という、時間を管理する仕事に就きながら、この辺りの感覚に鈍いなんて皮肉なものだ。

「じゃあ、今朝はゆっくりされてるんですね」

　朝に弱い梨子さんを思い、表情を緩めると

「そうなの。いつ起きてくるか分からないから、先に朝ごはん食べましょう。すぐ用意するから待ってて下さいね」

　智子さんはそう言って、リビングの奥にあるキッチンへと入って行った。

　梨子さんとの朝食は、今朝はお預けか……。

　残念な思いを、息と共に吐き出してから

「父は起きてると思うので、呼んできます」

　キッチンの智子さんに声をかけ、俺は自分たちの部屋になっている、和室へと向かった。

　部屋の前まで行き

「父さん、入りますね」

　声かけてから、襖を開けた。

　襖を開けると、父さんが布団の上で瞑想をしていて驚いた。

　精神よりも、身体的修業に力を注ぐ父さんの瞑想が新鮮で

　意外だな……。

　心の中で呟いていると

「何だ」

　いつもの鋭い口調と比べると、幾分か穏やかな声が尋ねてきた。

　これも瞑想の効果なんだろうか？

　そんなことを思いながら

「いま、朝食を作って下さってるので、終わったら食べに来て下さい」

　目を閉じたままの父さんにそう伝え、ダイニングに戻ろうと踵を返した。